■石垣調査写真事件(仙台高裁 H 9.1.30 平成7年(ネ)207号事件)

    アマチュア写真も著作物として認められるか?
    ●事件の概要
     アマチュア古代史研究家の原告(控訴人)は、原告が撮影した熊野地方の古代遺跡と考えられる石垣の写真を無断で自己の著書に掲載した被告に対し、著作権を侵害するものとして、損害賠償請求を提訴した。1審は原告の主張を一部認容したが、これを不服として原告が控訴した事件。

    ●裁判所の判断
     控訴人は、会社員として勤務する傍ら、余暇を利用して日本古代史の研究を重ねているものであるが、昭和49年頃から、神武東征伝承のふるさとである和歌山県熊野地方にある本件石垣の調査を始めた。これは地元の人達から猪垣と呼ばれているものである。控訴人は休日のほとんどを現地での調査に費し、その状況を影像の形に保存しておこうとの学問的な目的で、特に留意すべき風景を撮影した。本件写真(1)は、奈良県生駒市<以下略>所在の猪垣、本件写真(2)は、和歌山県東牟婁郡<以下略>所在の猪垣、本件写真(3)及び(5)は、那智勝浦町狗子川所在の猪垣、本件写真(4)は、和歌山県新宮市<以下略>所在の猪垣、本件写真(6)は、那智勝浦町高津気所在の人面石と呼ばれる対象物をそれぞれ撮影したものであり、撮影時期は本件写真(1)が昭和50年、その他は昭和49年である。これらの各被写体は、いずれも深い山中にあるため、現地に赴くのも容易でなかった。控訴人は、このような場所に何度も足を運び、更に本件各写真の撮影に当り、本件石垣の状況が理解しやすいよう、周囲の草木を取除いたり、また、撮影の位置、角度等に配慮し、望遠レンズや広角レンズを利用するなどしたりするなどの工夫を重ねて撮影を行った。
    (二) 右事実によれば、本件写真(1)ないし(6)は、控訴人が、我国古代史の研究ないし解明に役立つと考えて、被写体を選定し、その撮影方法についても工夫を凝らして、古代史学に関する資料を他にさきがけて明確にしておく目的で撮影したものであり、控訴人の著作物として保護されるべきものであることは疑いを容れないところであって、控訴人がいわゆる学者や職業的写真家ではなく、写真に関しては素人であることは右判断の妨げとなるものではない、として著作権侵害を認め損害賠償金の支払いを命じた。


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