■アリナビック事件(大阪地裁 H11.9.16 平成10年(ワ)5743号事件)

    類似性が認められるか?
    ●事実の概要  「アリナミンA25」という商品名で、肉体疲労時の栄養補給等を用途とするビタミン製剤を販売している武田薬品(原告)が、「アリナビック25」という商品名でビタミン製剤を製造し販売している東洋ファルマー(被告)に対し、著名表示の冒用行為であり、不正競争防止法2条1項2号の不正競争行為に該当するとして、提訴した事件。

    ●裁判所の判断
    1)原告表示は著名か
     原告商品は、その製造、販売開始以来日本全国において多数販売され、その結果同種医薬品の代表的な商品となっていたこと、その広告も各種媒体を通じて多額の費用を投じてなされていたこと、その広告のうち視覚的なものにおいては原告表示が見えるように行われていたことが認められるから、被告商品の製造、販売が開始された平成9年5月下旬の時点で、原告商品の商品名である原告表示が著名であったことは明らかである。

    2)被告表示は原告表示に類似するか
     不正競争防止法2条1項2号の「類似」に該当するか否かは、取引の実情の下において、需要者又は取引者が、両者の外観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものと受け取るおそれがあるか否かを基準に判断すべきである。

    a)原告表示と被告表示の外観について
     原告表示は、カタカナ文字の「アリナミン」とローマ字の「A」と数字の「25」からなり、被告表示は、カタカナ文字の「アリナビッグ」とローマ字の「A」と数字の「25」からなるものであり、両者は「ミン」の文字と「ビッグ」の文字の部分で外観が相違するが、その余の部分は共通している。  原告商品と被告商品の各包装箱に付された原告表示と被告表示の実際の使用態様を見ると、原告商品及び被告商品1、2のように、店舗で陳列したときに最も目立つと考えられる包装箱正面では、中央部に白地に黒色の太字で各表示が記載され、「A25」の文字が大きく、原告表示及び被告表示1では「A25」の上に「アリナミン」又は「アリナビッグ」の文字が、被告表示2では「A25」の左側に二段にして「アリナビッグ」の文字が記載されている。右外観の対比では、「ミン」の文字と「ビッグ」の文字の部分で外観が相違することは明らかであるが、表示全体の字体や文字の色、配列等においては、外観の印象上類似しており、特に原告表示と被告表示1とでは極めて類似しているといえる。

    b)原告表示と被告表示の称呼について
     原告表示は、「ありなみんえーにじゅうご」と称呼され、被告表示は、「ありなびっぐえーにじゅうご」と称呼されるから、両者は、語頭部分である「ありな」と語尾部分である「えーにじゅうご」が共通し、語中部分「みん」と「びっぐ」が異なる称呼である。
     そして、原告表示は11音であるのに対し、被告表示は12音と、被告表示の方が1音多いが、その1音は促音であるから、両者の音数の差から異なる印象はそれほど生じない。
     また、両者は、そのうち9音が共通し、しかも共通する部分は、語頭部分3音と語尾部分6音であるから、その単語を発音した際の印象を決める輪郭部分が共通しているということができる。

    c)原告表示と被告表示の観念について
     需用者は、被告表示中の「アリナビッグ」から著名なビタミン製剤のシリーズ名である「アリナミン」を、また、被告表示全体からもビタミン製剤を容易に想起、連想するものと認められる。

    3)以上の事実と既に判示した「アリナミンA25」の著名性を併せ考慮すれば、原告表示と被告表示は、全体的、離隔的に対比して観察した場合には、その共通点から生じる印象が相違点から生じる印象を凌駕し、一般の需用者に全体として両表示が類似するものと受け取られるおそれがあるというべきである。したがって、被告表示は原告表示に類似しているものと認められる。不正競争防止法2条1項2号の不正競争行為にあっては、誤認混同のおそれは要件とされていないが、前記認定事実からすれば、原告表示と被告表示とは、被告商品が原告商品の関連商品あるいは徳用商品であると一般需用者に誤認されるおそれがある程度に相紛らわしいというべきであり、両表示が類似していることは明らかである。

    原告商品被告商品1被告商品2

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