■タオルセット事件(大阪地裁 H10.9.10 平成07(ワ)10247事件)

    商品の形態か?
    ●事件の概要
     「BEAR’S CLUB」と題するタオルセットを販売する原告が、「DECOT BEAR’S COLLECTION」と題する被告商品のタオルセットの販売行為が不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為(形態模倣行為)に該当するとして、損害賠償を求めて提訴した事件。

    ●裁判所の判断
    1)比較の対象について
     原告商品と被告商品は、いずれも包装箱又は籐カゴに収納された状態で展示され、購入されるのであるから、その形態は、右収納状態のものを中心にとらえるのが相当である。

    2)同一性の判断について
    a)包装箱に収納された状態の原告商品と被告商品を正面から見た場合に、形態上の最も大きな特徴として看取されるのは、小熊の人形と小熊の絵が描かれたタオルがそれぞれ大きなブロックを形成し、それらが組み合わされて全体としての商品を構成しているという点である。

    ア)小熊の人形について
     大きさ、色及び表情においてほぼ同一のものであり、加えて、左耳の上に白いポンポンのついた赤色の三角錐状の帽子をかぶせている点、胸部分に丸い輪のタオルハンガーが取り付けられている点も同一であり、これらは小熊の人形を特徴づけており、見る者の注意を惹くところでもあるから、全体としてほぼ同一の形態であるということができる。
     アクセサリーについては、・・・といった違いがあるものの、いずれも小熊が両手で持つように配置されている上に、いずれも色彩が赤と白から成っているものであって、小熊の人形自体の全体的な同一性に照らすと、些細な相違にとどまるというべきである。また、タオルハンガーについても、・・・といった差異があるものの、その形状、大きさ及び取付場所はほぼ同一であり、小熊の人形自体の全体的な同一性に照らすと、やはり些細な相違にとどまるというべきである。

    イ)小熊の絵が描かれたタオルについて
     白地のタオルに数頭のかわいい小熊の絵が描かれている点、小熊の色が茶色である点、その服と帽子の色が赤、青、緑及び黄の組合せから成っている点、熊の絵の間には「BEAR」を中心とするロゴが記されている点が共通しており、これらの点は、タオルの柄を構成する基本的部分であって、形態上の印象の強い部分というべきである。
     もっとも、小熊の絵、色、姿勢、服装及び小熊の数並びにロゴの文字に異なる点がある。しかし、これらの相違点は、前記の基本的部分の共通点やア)で指摘した小熊の人形の同一性に照らせば、小さな相違にとどまっているものというべきである。
     したがって、タオル自体についても、類似性の強い形態であるというべきである。

    ウ)小熊の人形及びタオルの組合せについて
     商品の構成が全く同一であり、大きさもほぼ同一である。もっとも、原告商品と被告商品とでは、タオルと小熊の人形の配置が左右逆となっているが、・・・形態上の大きな相違とはならない。  その他、商品の外装として、包装箱の色彩がいずれも赤、白及び青の三色から成る点も共通しており、籐カゴのついている商品については、包装箱の上面と前面が切り抜かれて、透明のプラスチックが貼られている点も共通している。

    b)被告は、主として小熊の人形が持っているアクセサリーの色、タオルの柄及びキッチンクロスの存否の相違から、原告商品では全体として活発な男の子の印象を与えるのに対し、被告商品では全体としてかわいい女の子の印象を与えると主張する。しかし、原告商品も被告商品もその第一印象は、小熊をモチーフとしたかわいらしいタオルセットというものであって、被告が指摘する印象の差は、両者を子細に見比べた上でようやく理解できることである。したがって、この点を重視することはできない。

    c)以上を総合すれば、全体としてそれぞれ実質的に同一の形態であると認めるのが相当である。

    3)アクセスについて
     原告商品の販売の開始は、被告商品の販売開始の約11か月前であり、被告が被告商品を製造するに当たっては既に販売されていた商品を参考としたこと、小熊をモチーフとするタオルセットの形態には、他に選択する余地があり得るにもかかわらず形態も取り合わせも実質的に同一の商品を販売したことからすると、被告は、原告商品を主観的に模倣したものと推認される。

    4)以上により、被告商品は、原告商品の形態を模倣したものと認められる。

    原告商品被告商品

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