■発明の進歩性
特許出願(特許申請)において、その発明と同じものが知られておらず、新しさ(新規性)の要件を満たしていたとしても、
すでに知られている発明から他の技術者が容易に考え出すことができる発明は、特許を受けることができません。
特許出願(特許申請)の審査においても最も問題となる要件です。審査において「容易に考え出すことができない」ことをどれだけ主張できるかによって特許されるかどうか決まるといっても過言ではありません。
たとえば、「細線のペン」と「太線のペン」が既に知られているときの「両端がそれぞれ細線と太線のペン」のように、すでに知られている発明を単に寄せ集めたに過ぎない発明や、「椅子の移動をスムーズにするキャスター」がすでに知られているときの「机の移動をスムーズにするキャスター」のような発明の構成要素の一部を置き換えたに過ぎない発明は、「容易に考え出すことができる発明(進歩性のない発明)」として特許されません。
■ 考案の進歩性
実用新案登録出願(申請)においても「進歩性」が要求されます。実用新案制度は簡易な発明=考案を保護するものですから、
「きわめて容易に考えだすことができる考案」を「進歩性のない考案」として登録を受けることができない としています。
実用新案登録出願(申請) においては、実体審査をおこないませんので進歩性の判断をさえることなく登録されますが、
進歩性のない考案は、実用新案技術評価書において進歩性なしの判断をされたり、実用新案登録無効の対象 となります。
○特許庁の特許電子図書館(IPDL)による特許調査等先行技術調査
特許庁の特許電子図書館(IPDL)では、先行する特許出願(特許申請)等の検索が可能です。
したがって、これを利用すれば、自社で特許調査等先行技術調査をすることも不可能ではないかもしれません。
しかし、入力するキーワードの選択や特許出願(特許申請)等の内容の理解は、特許等を十分に理解していないとなかなか容易ではありません。
やはり、最終的には、弁理士等の専門家に相談するのがが一番間違いがないと思います。
ただ、特許電子図書館(IPDL)の有効な活用法はあります。
専門家に相談する前に、確実に特許できないものを自分で発見する手段として使用するには非常に有効かと思います。
このような活用の仕方をすることによって大幅な費用削減が可能となります。
特許調査等先行技術調査の目的
特許調査等は、上記のように、特許出願(特許申請)・実用新案登録出願(申請)をするにあたって、登録可能性の判断のためにおこなわれるほか、次のような目的でおこなわれます。
(1)業界の動向・他社の研究開発の動向を知る
他社がどのような方向性をもって技術開発をしているのか?ユーザーニーズは今後どのようなものになっていくのか?また、これらを踏まえて自社の研究開発はどのような方向性をもって研究開発すべきか?等の予測が可能となります。
(2)他社との重複研究を防止する
実験や試作を繰り返し、商品化のめどがたった時点で、特許出願(特許申請)・実用新案登録出願(申請)を決め、情報収集にとりかかるようでは遅いといえます。せっかく開発した技術も、すでに出願(申請)されているかもしれないからです。特許・実用新案登録がされないだけでなく、その技術開発のために要した時間や費用がすべて無駄になってしまいます。開発の初期の段階から重複研究の未然防止のために、特許調査等先行技術をしておく必要があります。
(3)自社開発のヒントにする
既存の技術には、新しい発明・考案のヒントが隠れていることも少なくありません。
(4)他社の特許権侵害・実用新案権をしないようにする
たとえ知らなかったとしても他社がすでに特許権・価値ある実用新案権を取得している技術を使ってしまえば、特許権・実用新案権侵害となります。そして、製造・販売の差止めや損害賠償を請求される場合があります。商品の開発段階から販売段階まで他社の特許権・実用新案権を侵害していないかを調査しておくことが必要です。
(5)他社の特許権・実用新案権の有効性を確認(無効審判請求前の情報収集・訴訟対策)する
自社の技術を事業化するときに障害となる他社の特許権・実用新案権を無効にするためにその特許の特許出願(特許申請)・実用新案登録出願(申請)前に公知になっている特許文献・実用新案登録文献などを調査します。