■ルービックキューブ事件(東京高裁 H13.12.19 平成12年(ネ)6042号事件)

    商品形態は商品等表示か?
    ●事件の概要
     商品名を「ルービックキューブ」とする回転式立体組合せ玩具を製造販売している原告が、ラナ(被告)に対し、原告商品の形態は原告の商品であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているか、又は著名であり、原告商品の形態に類似する回転式立体組合せ玩具を輸入、販売する行為は、不正競争防止法2条1号1号又は2号に該当する不正競争行為であると主張して、その差止め及び損害賠償を求めた。
     1審は、原告商品の形態は、商品の機能・効果と必然的に結びつき、これを達成するために他の選択肢を採用できない商品形態であって、不正競争防止法の保護対象とはならないとして、不正製競争防止法に基づく請求を棄却した。これを不服として原告が控訴した事件。
    ●裁判所の判断
     不正競争防止法2条1項1号は、周知な商品等表示の持つ出所表示機能を保護するため、実質的に競合する複数の商品の自由な競争関係の存在を前提に、商品の出所について混同を生じさせる出所表示の使用等を禁ずるものと解される。そうすると、同種の商品に共通してその特有の機能及び効用を発揮するために不可避的に採用せざるを得ない商品形態にまで商品等表示としての保護を与えた場合、同号が目的とする出所表示機能の保護を超えて、共通の機能及び効用を奏する同種の商品の市場への参入を阻害することとなってしまうが、このような事態は、実質的に競合する複数の商品の自由な競争の下における出所の混同の防止を図る同号の趣旨に反するものといわざるを得ない。したがって、同種の商品に共通してその特有の機能及び効用を発揮するために不可避的に採用せざるを得ない形態は、同号にいう「商品等表示」に該当しないと解すべきである。

     本件商品形態(全体形状が正六面体であり、その各面が9個のブロックに区分され、各面ごとに他の面と区別可能な外観を呈しているという形態)は、同種の商品に共通する機能及び効用に由来する数少ない選択肢である上、本件商品形態を避けて他の商品形態を採用した場合、一般需要者にとって代替可能な商品として市場において原告商品とは競合し得ない商品となってしまい、そのようなものはもはや同種の商品ということはできない。そうすると、本件商品形態(全体形状が正六面体であり、その各面が9個のブロックに区分され、各面ごとに他の面と区別可能な外観を呈しているという形態)は、原告商品と同種の商品に共通してその機能及び効用を発揮するために不可避的に採用せざるを得ないものと解するのが相当であり、したがって、商品等表示に該当しないものというべきである。

     原告商品の形態についても、正六面体であり、各面が9ブロックに区分され、各面ごとに他の面と区別可能な外観を呈しているという基本的構成態様に加えて、正六面体の各面に、黒色で縁取られた赤、青、黄、白、緑及び橙の配色がされていて、正六面体の大きさが一辺約5.6・であるという具体的構成態様に係る形態をも備えるものとして、出所表示機能を取得したものであることからすれば、全体としての原告商品の形態が「商品等表示」に該当するといわざるを得ないが、被告商品の形態との類否の判断に当たっては、それ単独では商品等表示性が認められない基本的構成態様を除外した具体的構成態様を要部として検討する必要がある

     イ号、ロ号、ハ号及びヘ号商品については、正六面体の一辺が約5.6・という大きさにおいて原告商品と一致するが、イ号、ハ号及びへ号商品の各面にはウルトラマン関係のキャラクター(ウルトラマン、ウルトラマンティガ、怪獣)の絵柄が、ロ号商品の各面にはマリンジャンボ及び図案化された海洋生物の絵柄並びに「ANA」のロゴが、それぞれ描かれているほか、各面の配色(絵柄の背景色)も原告商品のものとは異なる。そして、上記の図柄やロゴは、各面のほぼ全面にわたる大きさで、背景色に対して明りょうなコントラストを示す色使いをもって描かれているものであって、取引者、需要者において最も注意を惹かれる商品形態部分であるというべきである。他方、大きさの点については、原告商品及び被告商品の前示のような遊び方(使用態様)を考えた場合、両掌で当該商品の両側から容易に握持することのできる大きさとするのが自然であると考えられるから、
     正六面体の一辺が約5.6cmという大きさに特異性は認められない
     そうすると、このような原告商品の備えない特徴的な形態が付け加えられたことにより、大きさにおける共通性を上回る印象の相違をもたらすこととなり、全体として、類似のものと受け取られるおそれは解消されていると解するのが相当である。

     以上のとおり、原告商品の形態のうち本件商品形態を除外した具体的構成態様に係る形態を要部として考えた場合に、これに対応する被告商品の形態はいずれも原告商品の具体的構成態様に係る形態と類似するものとはいえない。したがって、被控訴人らによる被告商品の輸入、販売行為は、原告商品との混同を生じさせる行為ということはできないから、一審原告の不正競争防止法2条1項1号に基づく差止請求及び損害賠償請求は、理由がない。

    原告商品被告商品(イ号商品)

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