■おニャン子クラブ事件(東京高裁 H3.9.26 平成2年(ネ)4794号事件)

    著名人のパブリシティ権(著名人の氏名・肖像等が有する経済的利益・価値を排他的に支配する権利)は人格権か?財産権か?
    ●事件の概要
     「おニャン子クラブ」と命名された集団に属するテレビタレント(原告)は、原告の肖像写真および氏名が表示されたカレンダーを無断で販売した販売業者(被告)に対して、有名人の氏名・肖像に存する財産権及び人格権を侵害するものであると主張し、被告商品の販売の差止め及び損害賠償を請求した。1審での被告商品の販売差止めと損害賠償の支払いの認容に対して、被告がこれを不服として控訴した事件。

    ●裁判所の判断
     氏名・肖像を利用して自己の存在を広く大衆に訴えることを望むいわゆる芸能人にとって、私事性を中核とする人格的利益の享受の面においては、一般私人とは異なる制約を受けざるを得ない。すなわち、これを芸能人の氏名、肖像の使用行為についてみると、当該芸能人の社会的評価の低下をもたらすような使用行為はともかくとして、社会的に認容される方法、態様等による使用行為については、当該芸能人の周知性を高めるものではあっても、その人格的利益を毀損するするものとは解し難いところである。
     固有の名声、社会的評価、知名度等を獲得した芸能人の氏名・肖像を商品に付した場合には、当該商品の販売促進に効果をもたらすことがあることは、公知のところである。そして、芸能人の氏名・肖像がもつかかる顧客吸引力は、当該芸能人の獲得した名声、社会的評価、知名度等から生ずる独立した経済的な利益ないし価値として把握することが可能であるから、当該芸能人は、かかる顧客吸引力のもつ経済的な利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利を有するものと認めるのが相当である。したがって、右権利に基づきその侵害行為に対しては差止めを求めることができるものと解するのが相当である。

     これを本件についてみると、右カレンダーは年月日の記載以外はほとんど被控訴人(原告)の氏名・肖像で占められており、他にこれといった特徴も有していないことが認められることからすると、その顧客吸引力はもっぱら被控訴人の氏名・肖像の持つ顧客吸引力に依存しているものと解するのが相当である。そうすると被控訴人は控訴人(被告)の商品の販売行為に対し、前記財産的権利に基づき、差止請求権を有すると解すべきである。


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