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■生理活性物質測定法事件(最高裁 H11.7.16 平成10年(オ)604号事件) |
検査方法の特許によって、その検査方法を適用した製品の製造販売を差し止めることはできないと判示した事例
●事件の概要
「生理活性物質測定法」について特許を有する原告(控訴人・被上告人)は、医薬品の製造に際し、品質規格の検定のために、原告特許の「生理活性物質測定法」を使用している被告(被控訴人・上告人)に対し、医薬品の製造販売の差止めを求めた事件。
なお、原審は、本件発明は、概念的には、方法の発明であるが、本件方法が上告人医薬品の製造工程に組み込まれ他の製造作業と不即不離の関係で用いられていることからすれば、実質的に物を生産する方法の発明と同視することができ、本件特許権は、本件発明を用いて製造された物の販売についても侵害としてその停止を求め得る効力を有すると判断した。
●裁判所の判断
方法の発明と物を生産する方法の発明とは、明文上判然と区別され、与えられる特許権の効力も明確に異なっているのであるから、方法の発明と物を生産する方法とを同視することはできないし、方法の発明に関する特許権に物を生産する方法の発明に関する特許権と同様の効力を認めることもできない。そして、当該発明がいずれの発明に該当するかは、まず、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて判定すべきものである(特許法70条1項)。
本件明細書の特許請求の範囲には、「生理活性物質測定法」が記載されているのだから、本件発明が物を生産する方法の発明ではなく、方法の発明であることは明らかであり、本件方法が上告人医薬品の製造工程に組み込まれているとしても、本件発明を物を生産する方法の発明ということはできない。
したがって、上告人が上告人医薬品の製造工程において本件方法を使用することは、本件特許権を侵害する行為に当たるものであり、被上告人は、上告人に対し、特許法100条1項により、本件方法の使用を差し止めを請求することができるが、本件発明は物を生産する方法の発明ではないから、上告人が、上告人医薬品の製造工程において本件方法を使用して、品質規格の検定のための確認試験をしているとしても、その製造およびその後の販売を、本件特許権を侵害する行為に当たるということはできない。
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