簡単な技術=ローテクだって、その技術が提供する便利さを実現するための構造が過去になく、またそのような構造を一般の技術者では簡単に思いつかないと判断された場合には、特許になってしまいます。
「でも、そんな簡単な特許を取って意味があるんですか?」このような質問をしてくる方もいらっしゃることでしょう。
先端技術の分野で生き残らなければならない業界であれば、すでに公に知られている先端技術と比較して、自社の技術を評価しなければなりません。しかし、ローテクの分野であって、ライバル会社もローテクで特許を取っているような業界であれば、その中で技術を評価する必要があります。そのような業界の場合、「えっ、こんなものでも特許になるの?」と思われるようなちょっとした技術であっても、それを特許にすることによって市場を押さえ、高い利益を生み出すことができるのです。
簡単な技術に与えられたつい最近の特許をご紹介します。
いずれも大手企業の特許です。
|
権利者 : 花王株式会社
特許番号 : 特許3477595号
登録日 : 平成15年10月3日 |
図(a)、(b)のように、1枚の紙板にすくい部と把持部とが一体成形されていて、その紙板に、第1山折り罫線、第2山折り罫線、第3山折り罫線及び第1谷折り罫線、第2谷折り罫線、第3谷折り罫線を有している計量スプーンの特許発明です。
|
(a)展開状態の平面図 |
 |
(b)組立状態の斜視図 |
 |
|
上記それぞれの山折り罫線と谷折り罫線を折り曲げ作業するだけで、糊貼りやロック機構の差し込み作業によらず、計量スプーンを簡単に組み立てることができます。
また、把持部を断面コ字形状に構成できるので、計量スプーンの組立状態で、すくい部と把持部との間で上下左右のがたつきが生ぜず、この組立状態の計量スプーンを用いて、たとえば容器に入った粉末洗剤などを安定して計量できます。
さらに、平坦形状の底部が形成されるので、このすくい部の底部によって、容器の底面にある粉末洗剤などを残さずすくい出すことができ、また、直線形状の切欠辺が形成されているので、容器が角型容器である場合その隅部にある粉末洗剤などを良好にすくい出すことができます。
|
権利者 : 東芝イーエムアイ株式会社
特許番号 : 特許2702409号
登録日 : 平成9年10月3日 |
ディスク収納用ケース、特に書籍等に添付するディスク収納用ケースの特許発明です。
弾力性を有する正方形状の2枚のシート1,2を重ねてCD収納袋を作り、上部にCDの挿入口を設けます。表側のシート1の上端の左半分に形成した留め部1には、シート1の左右方向の中心から右側に出っ張った突出部1(斜線部)を設け、また同様に、裏側に出っ張った突出部2(斜線部)を設けます。これらの突出部1,2は重なっています。
CDをCD収納袋内に収納するには、まず、CD収納袋の左右の端部を内側に軽く押して、挿入口を開き、ここから内側にCDを挿入します。挿入後、表側の突出部1と裏側の突出部2とを交差させます。すなわち、表側の突出部1が裏側の突出部2の後面側に、また、裏側の突出部2が表側の突出部1の前面側に位置するようにします。
上述のようにシート1,2は弾力性を有しています。したがって、突出部1,2を交差させることにより、挿入口を閉鎖し、また、CD収納袋内のCDをシート1,2で表裏両面から押さえつけることができます。
これにより、挿入口からのCDの脱落を防止し、またCD収納袋内でのCDの不要な動きを防止することができます。
|
|