商標

    Q.
     商品商標とサービスマークの違いは何ですか?
    A.
     商標には、商品について使用される商品商標(英語では「Trade Mark」)と、サービスについて使用されるサービスマーク(英語では「Service Mark」)の2種類があります。
     両者の差異は、目に見える有形の商品に使用するか、目に見えず触ることもできない無形のサービスに使用するかの点だけです。
     たとえば、同じ「森永」のマークでも、菓子に使用すれば商品商標、直営のレストランサービスに使用すればサービスマークとなります。



    Q.
     商号と商標はどのように違うのですか?
    A.
     商号は、商法で定められており、たとえば「日産自動車株式会社」のように、企業が営業上活動するにあたり自己を表示するために使用する名称をいいます。
     商標は、商標法に定められていて、商品やサービスについて自己のものと他人のものとを区別するためのマークをいいます。たとえば、「プレサージュ」、「マーチ」などの個々の商品名(ペットネーム)がこれにあたります。

     登記された商号が独占権を持つのは、原則として本店同士が同一の市町村内に限られます。たとえば、静岡市に設立されている「トーカド製菓株式会社」と同一の商号の会社を他人が沼津市に設立することができます。
     しかし、登録された商標の独占権は、日本全国に及びます。したがって、静岡市の「トーカド製菓株式会社」が「トーカド」という商標を「菓子」についてすでに商標登録していれば、沼津市の「トーカド製菓株式会社」は、「菓子」についてその商標を登録することも使用をすることもできなくなってしまいます。



    Q.
     商標権とはどのような権利ですか?
    A.
     商標権は、そのネーミングやマークを指定した商品やサービス(指定商品・指定サービス)について独占的に使用できる権利です。

     さらに、他人が指定商品・指定サービスの類似範囲内でそのネーミングやマークに類似するネーミングやマークを使用しようとした場合にこれを禁止できる権利です。
      商標権は、商品やサービスごとに発生しますので、たとえ商標が同じであっても類似しない商品やサービスとの間ではまったく別個の商標権が発生します。例えば、「フローラル」という同一の商標であっても、「菓子」に付する場合と「化粧品」に使用する場合とでは、全く別個の商標権が発生することになります。



    Q.
     商標権を取得するとどのようなメリットがあるのですか?
    A.
     商標権を有していれば、登録商標を指定商品・指定サービスについて使用することを確保できますし(自己の使用の確保)、さらに、他人が登録商標と同一・類似の商標を指定商品・指定サービスと同一・類似の商品やサービスに使用する行為を排除できます(他人の使用を排除)。他人がこの範囲で使用をすると、使用の差止め、損害賠償を請求ができます。
     このように、登録商標を独占使用できることになりますので、技術性、デザイン性に富んだ品質の高い商品に商標を付して市場に提供し続ければ、その商標にはファンがたくさん集まり、「ブランド化」していくことができます。そして、大きな資産となっていくのです。



    Q.
     「ブランド」とはどのようなものをいうのですか?
    A.
     企業のネーミングやマーク、商品・サービスのネーミングやマーク(商標)などがその企業や商品・サービスの「らしさ」、すなわち、お客様にとってこういう存在でありたいというアイデンティティをしっかり表していて、それに接した人の心に何らかの「意味」や「価値」を生じさせるものであって、その商品をまた買いたい、そのサービスをまた受けたいという感情や行動を起こさせるものです。

     たとえば、「ヴィトン」。このブランドには、このブランドでなければ実現できないファッションがあるようです。使い込んでも長持ちする品質や飽きがこないデザインということもあるのでしょうが、カジュアルな装いであっても、ヴィトンを下げればそれなりのひとに変身できるという意味や価値を顧客の心に生じさせているようです。

     簡単に言ってしまえば、そのネーミングやマークを繰り返し利用してくれる生涯顧客=ファンを持っているものをいい、その顧客をたくさん持っていればいるほどブランド力が強いということになるのです。



    Q.
     「ブランド化」の成功事例にはどのようなもがありますか?
    A.
    ~たとえば関アジ、関サバ
     関アジとか関サバという名前のアジやサバは、他のアジやサバの何倍もの高値で取引されています。大分と愛媛の間にある同じ豊予海峡なのに、西の大分県佐賀関漁協から出荷されれば「関アジ・関サバ」の名前が付き数倍の高値で売られ、東の愛媛県から出荷されれば安く売られることになります。
     関サバ、関アジの獲り方は、一本釣りです。決して網を使いません。網を使うと魚が擦れ合い、傷つき、鮮度が落ちるからです。しめ方は活けじめです。鮮度を保つためです。売り方は、特定の飲食店、販売店のみに限定されています。
     つまり、魚を獲ってから消費者に販売するすべての過程において、「おいしく鮮度の高いアジやサバを消費者に食べてもらう。」というひとつのアイデンティティが確立されているわけです。そして、消費者は、安心してその魚を食べられるという信頼を得るのみならず、「今、関アジを食べているんだ!」という「スーパーで買った安いアジ」を食べる場合とはまったく違う食体験を味わうことになります。
     これがまさにブランドの価値です。


    ~たとえば口コミ高級酒「久保田」
     「久保田」が、蔵元・朝日酒造から発売されたのは1985年です。いまや「久保田」は「幻の酒」と呼ばれることもあるブランドとなり、発売以来毎年出荷量を伸ばしています。
     朝日酒造が「久保田」を発売する前の主たるブランドは「朝日山」でした。「朝日山」は1970年代後半あたりから量産酒のイメージが消費者に定着し、これを超一流にするのは難しい状況にありました。そこで、朝日酒造は「朝日山」の一ランク上の酒造りを決意しました。それが「久保田」なのです。

     「品質はもちろん、価格、販売方法、付加価値の点でも他社銘柄に負けない最高のものにする。」というコンセプトのもと、取り扱いを希望する酒販店の中で、「久保田」のよさを見極め、自店の柱として育ててくれる店にのみに絞り込んで販売するようにしました。
     また、全国の酒販店で構成された「全国久保田会」を組織して、販売網を強固なものとし、広告宣伝は一切おこなわず口コミによる販促効果を利用しました。
     このようにして、「久保田」は、高級酒としてのブランドを確立し、「久保田」を愛飲することがステータスシンボルになるよう育ちました。



    Q.
     中小企業にブランド戦略は必要ですか?
    A.
     「ブランド化」は企業の大小、扱っている商品、サービスの種類などとはほとんど関係ありません。
     むしろ、大企業とまともに戦ったら勝ち目のない中小企業だからこそ、徹底したブランド戦略で、ライバル会社との差別化を図らなければ生き残れないと言えます。また、顧客との絆づくりこそが、そのままブランドを創ることになる訳ですから、顧客とじっくり付き合わなければ仕事にならない中小企業こそ、ブランドを創り出しやすいということがいえます。中小企業だからこそブランド戦略を構築しやすいのです。



    Q.
     他人の登録商標をどのような使い方をすると商標権侵害になるのですか?
    A.
     商品の販売やサービスの提供に関連して使用する場合に商標の使用となります。

    (1)商品商標の「使用」について
     たとえば、婦人服の販売であれば、商標を、襟首のタグに付したり、値札に付したり、これら付したものを販売したり、下げ袋や商品パッケージ、店頭の看板に付したり、レシートに付したり、テレビや新聞・雑誌でコマーシャルしたり、などをすることが商品商標の「使用」にあたります。
     また、商品のメーカーを表示する製造標も、商品の販売店を表示する販売標も商標です。したがって、たとえば、「セリーヌ」のタグがついているついた婦人服をこれを取り扱う三越で販売し、三越のマークがついている手提げ袋に入れて販売すれば、この商品には、「セリーヌ」と「三越」両者の商標が使用されていることになります。

    (2)サービスマークの「使用」について
     たとえば、レストランについて言えば、マークを、食器や紙ナプキンに付したり、これら付したもので客に食事を提供したり、メニューに付したり、店頭の看板に付したり、チラシやパンフレット、割引チケットに付して配布したり、レシートに付したり、テレビや新聞・雑誌でコマーシャルしたり、などが「使用」にあたります。
     銀行であれば、ホテルであれば、タオルに表示したり、預金通帳やキャッシュカードに印刷したり、運送会社であれば、トラックに表示したりすることも商標の使用になります。

     なお、近年インターネットを使って商品やサービスを提供する「ネットショップ」が増えてきています。ネットショップにおけるホームページのタイトルも、店頭の看板とまったく同じですので、商標の使用となります。
     商品の販売やサービスの提供に関連して使用する場合ですので、単に「名刺」に 使用する場合などは商標の使用とはなりません。



    Q.
     ドメイン名は商標ですか?
    A.
     ドメイン名(「http:○○○.co.jp」の○○○にあたる部分)は、商標ではありませんが、不正の目的でまたは他人に損害を加える目的で取得し、保有し、使用した場合には、不正競争行為に該当するとして、差止請求、損害賠償請求の対象となります。
     たとえば、有名企業の名前をまったく関係のない者がそのドメイン名を取得し、その会社に不当な金銭で買取りを求めたり、そのドメイン名を使ってその会社の誹謗中傷をしたりする行為は不正競争行為となります。



    Q.
     一度発生した商標権はずっと有効なのですか?
    A.
     商標権の存続期間は登録の日から10年ですが(商標法第19条第1項)、存続期間の更新(商標法第19条第2項)をすれば永久に保護されます。
     なお、登録商標を3年間使用していない場合は、商標登録が取り消され、商標権が消滅してしまう場合があります。



    Q.
     商標登録を願い出ればすべて商標登録を受けることができるのですか?
    A.
     審査にパスしたもののみ登録されます。
     主な条件として
      ①他の商品やサービスとの識別力をもっていること、
      ②他人の登録商標と同一類似の商標でないこと、
    を満たすものでなければ登録されません。



    Q.
     商標の同一・類似はどのように判断しますか?
    A.
     商標の同一とは、2つの商標の構成が同じ場合をいいます。
     商標の類似は、商標の
      ①外観(見た目)
      ②称呼(呼び名)
      ③観念(イメージ)
    の3つの要素によって判断されます。
     ①外観(見た目)、②称呼(呼び名)、③観念(イメージ)のうちのひとつでも類似と判断されれば、原則として類似商標とされます。非類似といえるためには、これらすべてが非類似と判断される必要があります。



    Q.
     外観(見た目)の類似とは?
    A.
     文字、図形、記号の組み合わせなど、見た目の全体の構図や印象が似ていて間違えやすい場合です。
     商標は目から飛び込んできますから、まず外観から類否を判断します。
     外観の類似は、主として、図形がらみの商標について判断されます。



    Q.
     称呼(呼び名)の類似とは?
    A.
     呼び名の発音が紛らわしくて聞き間違えやすい場合です。
     通常は、文字商標同士の呼び名の類似が問題になります。
     一般的には、以下のような場合が類似とされます。
    i)相違する1音が、母音を共通にする音の相違
         スキッパー=スチッパー
    ii相違する1音が、子音を共通にする音の相違
         アスパ=アスペ
    iii)相違する1音が、清音、濁音、半濁音の相違
         ヘトロン=ペトロン
         クレカ=グレカ
         ボアール=ポアール
    iv)相違する1音が、弱音の相違、弱音の有無の相違
         ダンネル=ダイネル
         ビニラ=ビニラス
    v)相違する1音が、長音(ー)、促音(ッ)、撥音(ン)の相違、長音(ー)、促音(ッ)、
      撥音(ン)の有無の相違
         コロネート=コロネット
         スパーキー=スパンキー
         コッテン=コンテン
         レーマン=レマン
         コロネット=コロネト
         タカラハート=タカラハト



    Q.
     観念(イメージ)の類似とは?
    A.
     意味が同じであるため間違えやすい場合です。
     たとえば、文字商標において、
        「王様」と「キング」
        「星」と「スター」
    は観念が類似するといえます。



    Q.
     商品やサービスであれば、必ず商標出願をしなければなりませんか?
    A.
     たとえば、取引先の範囲が限定されている部品や半製品のネーミングについて商標権を取得したところで、他の部品や半製品との差別化が図られ、販売の促進に結びつくといったことはあまり考えられないことです。
     また、安売りショップで販売している価格勝負の日用雑貨などの商品等についても個々の商標をあえて商標権として取得する必要はないでしょう。短期間に売り切ってしまう商品についても同様です。
     特にチェーン展開を考えていない商店の屋号などもあえて商標の登録を考える必要はないでしょう。しかし、このような商店の屋号であっても、今後ショップのブランド化を図ろうと積極的に考えているのでしたら商標登録をしておくべきです。
     ただし、これらの場合であっても、先行商標調査はおこない、あらかじめ他人の商標権を侵害していないことを確認して使用する必要はあります。



    Q.
     どのようにして先行商標調査をしたらいいですか?
    A.
     特許庁のIPDL(電子図書館)(URL:http://www.ipdl.ncipi.go.jp/homepg.ipdlには、
      ①指定する商品や役務にはどのようなものがあるのか、
      ②その類似群コードはなにか、
      ③出願をしたい文字商標の読みと関連する読みの商標にはどんなものがあるか、
      ④出願をしたい図形商標と関連する商標にはどんなものがあるか、
    などを自由に検索することができます。

     したがって、これらを利用すれば、先行商標調査をし、商標登録出願をすることも不可能ではないかもしれません。しかし、商標の類否判断、出願を正確におこなうためには、前提として、商標法の本質を理解している必要があり、また、審査基準、審判審決例、判決例などの知識を有していなければなりません。やはり、最終的には、商標の調査や出願は、弁理士等の専門家に相談するのがが一番間違いがないと思います。

     ただ、IPDLの有効な活用法はあります。専門家に相談する前に、確実に登録できないものを自分で発見する手段として使用するには非常に有効かと思います。このような活用の仕方をすることによって大幅な費用削減が可能となります。



    Q.
     商標は、商標権の取得以外の方法によっても保護されるのですか?
    A.
     パッケージなどはデザインとして意匠権による保護も可能です。
     キャラクターは著作権としても保護されます。また、キャッチコピーなども著作権として保護される可能性があります。たとえば、「ボク安心 ママの膝(ひざ)より チャイルドシート」というスローガンには著作物性が認められています。
     また、他人の有名な商標・著名な商標は、商標登録されていなくとも、不正競争防止法に基づいて、損害賠償、差止めを請求することができます。
     

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